ハンプトンコートに行き着くまで

 9時25分頃、ウォータールーの鉄道駅に到着。時刻表で見ると、列車は丁度出たばかりのようだ。次の便までは30分くらいあるだろうと思って、念の為に行く先表示板を見ると、時刻表には載っていなかった9時36分発の列車がある。臨時列車という訳だろうか。ともあれ待たずに済んで良かった。列車は少し遅れ、10時少し過ぎにハンプトン・コート駅に到着した。

 駅の出口で珍しくも乗車券のチェックがあり、もう用はないと思ってしまいこんだ鉄道パスを引っ張り出した。移動式の仮設トイレが出来ており、雰囲気を盛り上げている? 早くも列が出来ており、既にちょっとしたお祭り気分だ。

 駅を出てすぐ、目の前にはテムズ川の流れ。対岸右手方向に目指すフラワーショーの会場がある。人々は橋を渡り、ぞろぞろと川に沿って歩いていく。橋の手前には、渡し舟の乗場があり、片道1£で乗客を対岸の会場入り口まで運んでくれる。船待ちの列の中に日本人夫婦と思しき男女の姿がある。丁度船が出たばかりなので、少々待ったが、その間にも川沿いをぞろぞろと歩いていく人々の姿が見える。確かに歩いてもそれ程かからない。

 船が戻ってきた。席は屋内、屋外とあるが、殆どの乗客はまず屋外に席を占める。確かに屋外席は景色が良く、川を渡る風がさわやかだ。ハンプトンコート・パレスの赤煉瓦造りの建物が彼方を滑っていく。ここ何年か、フラワーショーに行くたびに素通りばかりしている。
 船旅はあっと言う間に終わり、対岸の桟橋に到着した。

 

渡し舟で会場に到着、桟橋にいたスタッフは、ちょっとお洒落なギャングみたいな格好でした。

 

 会場ゲートで、入場券を申し込んだのにまだ受け取っていない旨を言うと、右手奥の受付に行けとのこと。ここでクレジットカードと、申し込み時のコピーを見せて尋ねる。係がカードの番号を入力して調べ、何も反応しない、本当にこのカードで申し込んだのか、と言う。間違いない、と答えるとなおもごちゃごちゃ操作を繰り返した結果、入場券を発行してくれた。にっこり笑って迷惑をかけて申し訳ないと。おお、イギリス人の口からこんな言葉が出るとはなんとも意外。

 会場に入ってすぐ、4£のガイドブックを買う、と言ってもこの会場の状況ではとてもゆっくりガイドブックを見ている時間などない訳で、必要なのは地図の部分だ。

 勿論直行したのはバラの展示。ここであっと言う間に2時間が経過。ついで他の植物の展示へ。バラのテントから、次の植物のテントまで随分離れており、この間に個別の展示の単独のテントがぎっしりと並んでいる。その有様はまるで東南アジアや中東の活気溢れる雑然とした市場さながら。

 朝のうちは曇っていた筈の空は、いつの間にか晴れて非常に日差しが強く、かつ暑い。飲み物のコーナーで冷えたサイダー(リンゴ酒)1パイントの大コップを買い、これを飲みながらテントからテントへとはしごする。意外にアルコール度が高い。ちょっと危険な歩く酔っ払い、かも?

 

黒味を帯びた色が印象的なゼラニウムのLord Bute。 豪華絢爛なユリの展示。何か好みの品種が発見できないかとじっくり眺めたけれど、1輪ずつ見てもこれといった花は見つからなかった。
どこがどうなっているやら、またどうやって運ぶか謎のクレマチスの展示。左写真、白八重が多分アークティク・クイーンArctic Queen、暗いのがバーマ・スターBurma Star、右の白っぽいのはBlなんとかと名札があるが不明。しかしニオベNiobeというメモもあるが。
右写真、淡い藤色がペルレ・ダジュールPerle d Azure。
日本の原種でイギリス人に大人気のクレマチス、シーポルティSieboltii。右はビューティ・オヴ・ウスターBeauty of Worcester。 アヤシイ食虫植物の群れ。その美しさとへんさに脱帽。

 

特大の展示「ハーディのコテージ」。ドーチェスター近郊にあるトマス・ハーディの生家を大テントの中に再現した。周囲は人で一杯で、コテージを中心に回遊するマグロの群れのよう。

上に同じく。こういうものを見ると、昆虫に生まれなくて良かったとつくづく思うのである。

何故か毎年バラのテントに同居するアヤシイオブジェの数々。

お馴染みのバーバスカム、黄色種。良く見かけるけれど、一番見事に咲くのはやはりこの色。 長年欲しいもののひとつ、憧れのサーモン色のバーバスカム、ヘレン・ジョンスン。
白のバーバスカム、赤いダリアとの対比がきれい。 セントポーリア。こうした人工的な飾り付けってイギリス人好きみたいだ。

スイートピーの展示場は芳香で一杯。種の販売もあり、お客さんで一杯。勿論私も買いました。 少し毛色が変わったジギタリス。
花の展示。薄赤いカンパニュラはおなじみのホタルブクロの仲間、タケシマーナ。 テントの中に作られた寄せ植え花壇。見事だっだれど、出来すぎていて人工的と感じたのはひねくれている?

 

 今の季節にどうやってあわせたのか謎の水仙の群落が意外で美しい。バラと他の植物で殆どの時間をとられてしまい、オブジェやグッズなどをじっくり見る時間がなかったのが何とも残念。一体どうやればこれらの全てを1日で回りきれると言うのだろう。

 今回、イギリス人の真似をして、会場でのんびりご飯を食べる、せめてゆっくりお茶にする、を実践してみたかったが、貧乏性の日本人には到底無理な相談で、今回も飲み物こそしっかり手にしているが、到着から帰るまでの間、休むことなく会場内を歩きつづけたのであった。

 

戦利品を手に引き上げる人々。

 

ハンプトンコートから帰るまで

 帰りは歩きながらハンプトンコート・パレスの庭を覗くつもりだったが、これは失敗だった。歩くと道は意外に長く、そして埃っぽい。汽車の時間が迫っているので結構焦る。こういうときに限って道を間違えて宮殿の敷地に入ってしまい、引き返す羽目になる。時間に余裕がある時なら、遠回りして帰るのもなかなか楽しいのであるが。川に沿って急いでいると、先程まで客待ちしていた船にすーいと追い抜かれてなんだか馬鹿みたいな気がした。
(写真はハンプトンコート・バレスの庭、満開のヘメロカリス、背後に見えるのが宮殿の一部。)

 プラットフォームには左右に列車が停まっている。左は混んでいて立ち客がいるが、右はまだ空席がある。駅員にどちらが先に出るのかと聞いたら、1番だというので左手の混んでいる列車の方に乗った。なかなか動かないで変だと思っていたら、何とすいている反対の列車の方が先に出てしまった。え?? こちらが1番だと思ったのは私の勘違いだったのか。でも、近くで立っていた女性のグループが先発する列車を見てあらっと言う顔で笑っていたのは、やはりこちらが先発する筈だったからではないのかな。事実は目下不明。イギリスの鉄道には謎が多すぎる。

 ところでこちらの列車は一向に発車する様子もない。ようやく動き出したと思ったら随分のろのろと走り、ウォータールーまでたっぷり40分もかかってしまった。全くとんでもない列車である。この後、ユーストン駅に預けておいた荷物を持ってシュルーズベリまで移動した。無事にこの日が終わるまで、もうひと騒ぎあったのだが、その話はまた後日。

 

もどる  バラの展示 その1、デイヴィッド・オースティン

 

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