Rousham Park

ラウシャム・パーク

個人所有

2001年7月4日訪問

(2003年1月20日追加)

所在地  イングランド中部 オックスフォードシャー
お勧め宿泊地  バンベリー(本当は好きではないけれど)
(ロンドン、メリルボーン(まれにパディントン)鉄道駅からバーミンガム・スノーヒル方面行き列車にて。1時間40分程度。)
またはオックスフォード
(ロンドン、パディントン鉄道駅から1時間程度。)
公共交通機関 パンベリー、オックスフォードの路線バスX59。
1時間に1本と(イギリスにしては)比較的便利。
公開日(2001年度) 庭は連日10時から4時半。館は水曜と日曜の2時から4時半。

 私はバンベリーに滞在していたが、オックスフォードからのバス便も便利。バンベリーは地図を見定めて、幾つかの庭めぐりの拠点としてここを選んだのだが、正直言ってこの町は大外れ。ヒースロー空港への直行便の長距離バスが頻発しているのでその点は便利。

バンベリーからラウシャム・ハウスへの遠く曲がりくねった道のり

 今日はラウシャム・ハウス、その後ブロートン・カッスルを見て、明日のハンプトン・コート・フラワーショーの為にロンドンに移動する予定。荷物をまとめ、朝食の後、支払いを済ませて外出。荷物を預ける。

 地図、昨日見ていて気づいたが、バスよりも列車の方が便利かも知れない。駅で確かめるつもりだったが、その前にまず郵便を出しにいく。やけに高いことを言うので変だと思って良く見たら、航空便の料金だった。気づいて良かった。バス・ステーションと駅の方に向かう途中、オックスフォード行のバスが入ってくるのを発見。考えを変えてこれで行くことに決めた。並んでいるので、この前のオフィスに入って時刻表をもらう。

 運転手にラウシャムに行きたいというとあっさりわかってくれた。じっくりと見ていると、バスはA道路を離れて村へと入る。村に寄った後、再びA道路に戻るのかと思って見ていると、バスはそのままローカル道路を通り、ラウシャムの門前を通ったのだった。これは便利。バスで正解だった。

 バス通りがT字路の横棒で、ラウシャムへの私道は縦棒にあたる。左に派手な花で飾られた小さなゲートハウスらしきものがある。道の両手には菩提樹の並木が花咲いて素敵な香りだ。右手は放牧地で、こちらを見詰める牛の群れに気を取られていたので、左手に館の真っ正面が見えていたのに気づくのが遅れた。

 道は左方向に緩く弧を描く。突き当たった場所の右手に納屋のようなものがあり、ここの自動券売機で券を買うのだった。3人の賑やかな女性たちが小銭をじゃらじゃら出して相談しているのを見ると、小銭がないらしい。2£玉を出して両替出来ないかというので、1£と50ペンスの玉に替えてあげた。しかし、中に入っても切符を回収する人は見当たらず、イギリスで良く言うところの「正直箱」方式なのだった。

ラウシャム・パーク

 入り口は館横の芝生を横切って左手方面。角を回ると、広々とした芝生が開けている。この広大な芝生の前を、館を右手に見つつ突っ切ったその先には素敵なウォールド・ガーデンがあった。ラウシャムと言えば風景式庭園の印象が強くて、このようなものがあるとは全く知らなかったので大いに驚く。ボーダー花壇の真ん中に池があり、アーチの薔薇とオニサルビアなどがきれいだ。しかし、凄い日差しだ。

咲き出した白のカンパニュラが見事。 池の辺のオニサルビア(クラリー・セージ)。
なかなか見事なボーダー花壇、左手の白い花穂はカンパニュラ。奥に舘が見える。 円形の小さな泉水を囲む薔薇の植え込みとにょきにょき育つオニサルビア。

 

  ところで肝心の風景式庭園はどこだろう。探しているうちに墓地に囲まれた小さな教会を見つけたので、入ってみる。中は無人。印象的な記念碑が幾つもある。床には若くして死んだ18世紀の男女の記念碑がある。男女の年齢は一世代違う。真ん中の記念碑は牧師夫妻のもの。左手にも美しい記念碑がある。大戦で死んだ同姓の男3人のものだ。

教会の壁の記念碑。大戦(1914-1918)で戦死した3人の同姓の男性を記念したもの。 墓地の敷地内にも奇妙な植え込みが。

 改めて地図で確かめると、この教会は求める風景式庭園とは真反対の位置だと判明。どうも、私の庭めぐりは何故か行きたい場所の真反対に出るものとほぼ相場が決まっている。

 先程通過した正面の庭まで引き返す。ここは館の前の芝生で、ライオン像の向こう、眼下には広々とした景色が開ける。館を背にして左側の木陰に入ってみる。そう言えば、先程ここに入っていくグループを見たっけ。やはりこの方向が庭ということかな。

 中は暗い木のトンネルになっていて、かなり荒れている。道は緩い下り坂だ。そのうち行く手に彫刻が3つ現れたが、どう見ても地図にある「死にゆく剣闘士」ではない。自分のいる場所が良く掴めない。

 そのうち、テラスが現れて何となくわかってきた。この辺りは見晴らしが良い。更に進むと忽然と池が現れた。おや、記憶によるとこの池が散策コースの「あがり」だと思っていたけれど、逆の道を通ったのだろうか。

 まずは池に流れ込む水をたどってみる。細いリル、丸い水たまりを経て、先へ進むと水は地下に潜る。小さなあづまやの中に据えられたオブジェはどう見てもローマの火葬骨入れみたいに見える。

オクタゴン・ポンド。水草が一杯。ここから流れ出た水が下のコールド・バスに注ぐ。 これがコールド・バス。単なる水溜り。よそ見していると落ちそう。 これ、火葬骨入れじゃないだろうか…。

 グリーンを挟んで開けた展望。川だ。左手方向に進むと橋が見える。この橋に向かって川沿いに小道が続く。当然何かあると思って行ってみる。足場が悪いし、ぬかるんでいるので、うっかりすると川にどぼんだ。いや、川沿いの有刺鉄線に刺さって止まるか。用心しいしい行き着いた先は金網で行き止まり。せっかく狭苦しい木のトンネルを潜ってきたのに。騙されたような気分で引き返す。こんな思わせぶりな道、そのままにしておくなー。せめて入り口に立て札でも立てて欲しい。

この道をたどった先には…。何もないのよ。行き止まり。 地所の境目。小川越しの眺め。この先にゴシック風の廃墟だったか小屋だったかがあるらしいのだが、今はなくなったのか、木が茂ってわからなくなったのか…。

「上の滝」なる石組み(左)とその遠景(右)。本当はこの上にヴィーナスとキューピッドが立っていた筈。

カワウソ狩り犬のリングウッドというらしい。詩まで刻んであった。 傍らに立つかなり怖そうな白鳥の像。今にも食つきそうである。

 戻って木陰で一休み。木々のざわめきがものすごく、日差しが強いし風がきつい。

 引き返し、池の傍らに近づいてみると、犬の墓らしい記念碑を発見。この池の背後にある石組みが「上の滝」とあるものらしいが、本で見るとこの上にある筈のヴィーナスとキューピッド像は台座だけを残して影も形もないのだった。おまけに、この上にある筈の池も干上がっていた。奥にもうひとつ、干からびた池があるらしい。維持管理が大変なのはわかるが、随分荒れているなあ。まあ、個人の庭だから仕方ないか。それを思えば入場料3£は安い。

 元の見晴らし台に出たので引き返し、ずっと森の中を歩いて、ゴシック・シートにようやく行き着いた。ここは地所を挟んで、建物の反対にあたる。はるか彼方に「死にゆく剣闘士」らしいものがようやく見えた。

ゴシックシート、この向こうを直進すると入り口なのだが、地所が囲われていて不可能。この辺り、背後に道があって騒々しい。 死にゆく剣闘士の像。

 再び森の中を歩いて、別の道を通って館に戻る。12時21分のバスに乗ることにしたので、時間がないがもう一目ウォールド・ガーデンを見てから近道を通って出口へ。建物の前を通ると、朝は閉まっていた筈のハウスが開いている。いつ開いたんだ? 折角なので中を見たいとも思ったが、もう一便遅らせると次の行動に響くし、と心残りではあったが見送ることにした。

 進行方向は日向で暑いので、反対側(館側)の木陰で バスを待つ。オックスフォードからのバスは少し遅れてきた。

蛇足

 終着のバス・ステーションまで行かずに、バンペリーの中心で降り、牛乳とフィルムを8巻買う。中心街を歩いてバス・ステーションに向かう途中、道端のカフェにいた女性たちから声をかけられた。先程、ラウシャム・パークでお金を崩してあげた人々だった。勧められたので、そこに座ってしばらく話をする。ここで買ってきた牛乳を開けるのはまずいのではないかと思ったが、彼女たち、気にしないで飲めば良いと言って、店から空のグラスをせしめてきてくれた。(本当はまずいと思う、やっぱり。)アメリカのオレゴンからきたそうだ。ああ、陽気で騒々しいと思ったらやっぱり。オレゴンのことはあまり知らないが、降水量が多くて森が多い土地だと思う。話しているうちに、ブロートン行きのバスの時間が来たので、バス・ステーションに急いだ。牛乳を忘れたことを思い出したが、まあ仕方ないと諦める。

 が、バス・ステーションに着いてびっくり。2時15分の筈のブロートン行きのバスは2時40分発になっている。信じがたいことに、案内所でくれた時刻表のコピーが古いものだったらしい。何とまあびっくりのバンベリーの観光案内所である。時間があるので、一旦戻って、彼女たちにその旨を言いふらしにいった。本当は牛乳を取り戻すのが目的であったが。

(ブロートン・カッスルへと続く)

参考 「英国ガーデン物語―庭園のエコロジー」赤川 裕 (1997/07) 研究社出版 にラウシャム・パークが詳しく取り上げられています。

ブロートン・カッスルへ続く

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