Pashley Manor

パシュリー・マナー

個人所有

1999年6月26日訪問

所在地  イングランド南部 イースト・サセックス
お勧め宿泊地  タンブリッジ・ウェルズ
(ロンドン、チャリングクロス鉄道駅からヘイスティングス方面行き列車で45分程度)
公共交通機関 なし、タンブリッジ・ウェルズから最寄の村までバスのち徒歩、門まで30分。
公開日(97年度参考) 4月中旬〜9月、火、水、木、土、バンクホリデー、11時から5時

 

イギリス南部の観光の拠点であるタンブリッジ・ウェルズTunbridge Wellsから二階建ての路線バス(254番)で南東へ。

最初の目的地は小さな村タイスハーストTicehurst。

二階建てバスで行く田舎のドライヴは最高だ。雑然とした大都市の周辺を離れ、15分もせぬうちに、辺りの光景は一変する。山あり谷ありの変化に飛んだ地形の中、古びた家々のたたずまいが美しい。6月の南イングランドは正に百花繚乱。

 それは良いのだが、イギリスの運転手にままあることながら、この運転手もまた極めて操車法が荒い。道路端に近い左側の前方が絶えずばちばちと並木や生け垣の枝に当たり続けている。時折、ばっちーんと凄い音を立てて太い枝が当たったり、開いた窓の間からちぎれた葉や枝が飛び込んでくる。最前列の席のにーちゃんたちは、慣れているのか、度胸がすわっているのか、それとも全く鈍感なのか、平然としている。その背後で枝が迫るたびにびくびくしている外国人旅行者一名。

 9:55頃、割と新しく見える町に着いた、と思ったら先に進むとそこは全く印象がかわった古くて美しい町。ここがWadhurstのようだ。この町を抜け、小さな鱗屋根の家と右手の畑の間で停車。干し草を作っている様が見える。如何にもイギリスの田舎である。干し草作りは晴天が何日も続かないと出来ないのだ。フラックスの畑もあった。もう少し前なら、夢見るような青い絨毯を目にすることが出来たであろうに、温暖なこの地方ではとうに収穫期のようだ。

 10:10頃、バスは当座の目的地タイスハーストに着いた。ここが公共交通機関によるパシュリー・マナーへの最近地点。さて、この先は? ここからタクシーを呼ぶか、歩くか。

 天気が良いし、歩くことに決めた。10:20頃、方向を確認して歩き出す。町を出ると辺りは緑地と生垣。うねうねと続く道に沿ってただ歩く。程なく左手の道端になにやら生き物の屍骸を発見。おお、バジャー(badger、アナグマ)だ。実物を目にするのは初めてだ。外傷は見えないが、やはり交通事故なのだろう。合掌。

 入り口まで歩くこと30分。駐車場の傍らには巨大なモンキー・パズル・トゥリーが天に聳えている。イギリス人の大好きなへんてこな木だ。この先もまだ長いだろうと覚悟をしていたが、意外に近いのでかえって驚いた。緩やかな車道の向こうに印象的なハーフティンバーのマナーハウスが見える。

 

 11:00少し前に到着。入り口の周囲には苗の売店があるのが目立つ。庭に入って最初に目を奪われたのは、満開のラヴェンダーと淡ピンクの薔薇。実は書き留めた筈のこの薔薇の名が行方不明だ。良く聞く有名な品種であるのだが。兎の耳のような形の赤紫のラヴェンダーと、非常に淡い輝くようなピンクの薔薇の組み合わせが素晴らしい。、意外に沢山の薔薇が咲いている。庭はそれ程大きいものではないが、遠景に羊のいる放牧地が望めるので、スケールが大きく見える。借景の威力は見事だ。おまけにただ。

装飾的なストエカス・ラヴェンダーとシルバーピンクの薔薇。簡素かつ見事な組み合わせ、何よりも真似出来そうなのが良い。

ジギタリスは終わりかけ。右の後方にちらっと見えるのが隣接した放牧地。小さな点は羊。 アカンサスには少しまだ早い? 背景は池、芝を挟んで左手には館、テラスにはティールームがある。

ガリカ種のオールドローズ、名前が良くわからない…。 リーガルリリーは個人的にはあまり好きではないけれど、イギリスの庭で良く見る。
日本の温暖地では幻の眺め、雄大なデルフィニウムの花穂。苗が出回るようになったので、花を見るのは夢ではなくなったが、それでも冷涼な地域で見るほど大きくならない。 オールドローズには幾分遅いかと思ったが、それでもまだまだきれいな薔薇園。

    

ふきつめ咲のクレマティスは日本人の美的感覚から見れば結構ゲテモノ。でもこれは白花だから随分まし。 ハーフティンバーの館の前面は16世紀半ば、残りは初期ジョージ王朝風。
    
池に流れ込む人工の滝(左)、どこかで見たような構図だがやはり絵になる眺めのボーダー花壇(中)、塀の彼方には放牧場が開ける。(右)

 池の手前に広い芝生があり、見晴らしの良いテラスのティー・ルームではお茶が供されている。ここで一休み、と思ったが、いつの間にか随分人が増えて混雑してきた。初めの頃は結構すいていたのに。

 時刻は12:20頃、次の庭に行く為に引き上げることにした。帰路はタクシーに13:00頃に迎えに来て貰えば、お茶が飲める、と思ったが、甘かった。

 以前入手した、「最寄のタクシー会社に自動的に繋がる」という魔法のナンバーにかけてみたが、何回やってもつながらない。設置の電話機が旧式すぎて、フリーダイヤルが使えないようだ。全く、イギリスらしい話だ。

 何か具体的な番号が必要なのだ。

 仕方ないので、近くの調理場の人に声をかけ、地元のタクシー番号を教えて貰うが、出ない。これもまた良 くある話で、珍しいことではない。

 建物をぐるっと巡り、入り口近くの売店の方に戻って、そこの係に相談することにした。彼女が地元のタクシー会社に電話してくれたが、出ず、更に別の会社を探してもらい、ようやく捕まえることが出来た。 幸いにして、このタクシーは早々にやってきてくれた。

この日はタクシーを使って、ジ・アウル・ハウスとスコットニー・カッスルを巡った後、宿のあるタンブリッジ・ウェルズに戻る筈が、当てにしていた最終バスに置き去りにされるという椿事に遭遇したのだった。

その顛末はまた、後日…。

続く、かな?

蛇足

イギリスではガーデンに公衆電話がないことが多い。スタッフに頼むと「こちらで呼んであげよう」と言うのが普通だけれど、たまにはボケなやつがいて、「最寄の村に行けばあるよ、徒歩1時間」とか言ったりするので、その時には「あなたが電話で呼んでくれ」と強く要求するべし。電話がないのなら、スタッフが連絡に関する義務を負うのは当然である。譲歩したら負けだ。

(今までの経験で一番間抜けだったスタッフはダービシャーのハドン・ホール。ここの係の安請け合いのせいで、野中の道を物凄く歩く羽目になったのだ。)

タクシー会社に電話しても出ないことが多い。案内所で貰った番号の3つのタクシー会社が全滅だった経験もあり、どうしても必要な場合は事前に予約をしておく方が良いかも知れない。(電話が繋がれば、だが。)

タクシー会社に繋がっても、「タクシーが出払っている」(個人経営の場合が多い)とか「その時間にはいけない」と言われることが多いので、臨機応変に応対しよう。

どうしても必要に迫られていなければ、ヒッチハイクはやってはいけない。乞食ではあるまいし、国民の恥だ。(個人的な意見。)ただ、アウターヘブリディーズ諸島では宿の女主人にヒッチハイクを勧められた。「車の台数が少ないし、地元の住民はみなそうしている。」と言うのでなるほどと思ったものだし、現に悪天候の中をてくてく歩いていると、通りがかりの車が次々停まって声をかけてくれたのには感動した。しかし、天気も良いのに、健全な体があるのに、見ず知らずの車を停めて乗せてもらおうなどと考えてはいけない。

もしも運良く乗せてくれると言う人が現れたら、その申し出を受けるか否かは自己責任で考えよう。

イギリスは治安が良い国であるが、全く犯罪がない訳ではない。連続殺人犯なんてのも結構いるのだ。

「クロコダイルがいるので遊泳禁止」の注意書き。お土産に欲しかったな。

 

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