Groombridge Place

グルームブリッジ・プレイス

会社所有

1999年6月27日訪問

所在地  イングランド南部 ケント
お勧め宿泊地  タンブリッジ・ウェルズ
(ロンドン、チャリングクロス鉄道駅からヘイスティングス方面行き列車で45分程度)
公共交通機関 タンブリッジ・ウェルズよりの路線バス
公開日(97年度) 4月〜10月、毎日10時から6時

映画「英国式庭園殺人事件」の撮影が行われたグルームブリッジ・プレイス。以前、種苗会社の会報で「ホワイトガーデンがある」と知り、一度訪ねて見たいと思っていた。ところが、現地の案内所で入手した金ぴかの巨大なリーフレットは、甚だ品位に欠ける代物で、極めて印象が悪かった。まあ、あまり思い込みは禁物。先入観を排除して訪ねなければ。

 その日、最初に訪ねたペンズハースト・プレイスが意外に早く見終わった。最初、15:58のバスで宿泊地タンブリッジ・ウェルズに戻るつもりでいたが、まだ時間がある。今からグルームブリッジ・プレイスに行くことも可能と気をかえて、村のパブの電話でタクシーを呼ぶ。例によって自動的に最寄のタクシーにつながるという無料ダイヤルは受け付けなかったが、ふと見ると、電話の前にタクシー番号が書いてある。そこにかけると女性が出て、5分で行くとのことだ。パブ、レスター・アームスの前で待つ。この名前はエリザベス女王の寵臣レスター伯爵(ロバート・ダドリー)から取ったのだろう。この界隈、エリザベス時代のものが多く残っている。

 普通の女性が普通の車を運転してやってきた。グルームブリッジ・プレイスまでは8£。(かなり高い、今思うと。)帰りに名刺をくれた。商売熱心だ。まあ、これが本職ではなくて、内職か小遣い稼ぎなのだろう。

 3時少し前、グルームブリッジ・プレイスに入る。意外に混んでいて、しかも子供連れが多く、ムードはかなり悪い。期待していたイメージとは違う。いや、あの金ぴかパンフレットのイメージにはぴったりかも知れない。入場料5.5£、ガイドブック3.5£。高い。

 あまり期待しないで入ったのだが、そのせいもあってか、逆にその後は良いところが目立った。特に気に入ったのは、イチイの生け垣で区切られた整形式庭園と、目当てのホワイト・ガーデンだ。白薔薇はごく普通だが、八重の白ケシは恐ろしい程のヴォリュームだ。雨がかなり降ってきて、人気が失せたホワイト・ガーデンを完全に独り占め出来たことも楽しい。騒々しい家族連れがいなくなったので大いに気分が良い。雨は降ったり止んだりの繰り返しだ。ペンを忘れてきたので、記録をつけることが出来ず、ただぼーっとする。まあ、たまにはこんなのも良いか。

組み合わせの色彩は結構派手。怪しい狛犬もどきが、ひっそりと。日本製ではなさそうだ。

こちらはまだアリウムが咲いていた。

 

ダリアのようだが、実はガリカ・ローズ。暗い紫と傍らの明るい黄緑の葉の対比がきれい。 青花は確かネペタ、ちらりと赤いのはけし。背景に黒葉のダリア。 巨大なアリウムの葱坊主。花が終わる何がなんだかわからない。
立派な鉢に植えてあるのはただのエキウム。 あずまやの上に孔雀。態度がでかいのよ、こいつ。何よりもけったいな声で叫ぶこと。 かなり派手なペンステモン、でも周囲の花の組み合わせが良いので結構まし。
見事な八重咲きのケシ。この品種は日本では栽培禁止だが、煙草なんぞが大手を振って流通していることを思えば理不尽この上ない話である。 悪天候のせいで画面が暗いが、静かで雰囲気が良かったホワイト・ガーデン。 木に登るランブラー・ローズも見事だったが、出しっぱなしの梯子をどうにかしろって。
ホワイトガーデン遠景。黄色いのはアルケミラ・モリスだったと思う。
周囲を堀に囲まれた館は非公開ながら、庭にとっては効果的な借景となっている。建物の様式は新しいが、堀の存在から見て、もともとの歴史は中世期に遡るのではないだろうか。

 放し飼いの孔雀が時々奇声を上げるのが変な感じだ。東屋のベンチに座っていると、すぐ足元までロビンがやってきたので、ゆっくり観察出来た。ロビンは殆ど人の存在を気にしない、と言うよりも好んで近くによってくるように見える。それにしても、あんなに爪楊枝のように細い足で、良くあれ程丸々とした体を支えられるものである。

まるまるとしたロビン。本当に足元までやってきた。 巨大なグネラのポット苗。こんなものまでポットで売られるのか。しかし、買う人、いるんだろうか。

 

 館はプライヴェートで見られるのは庭だけなので、時間は充分にある。本当は森の散策も出来るのだが、そちらは止めておいた。実は行ってみようと足を向けた時に、細い道をグループがぞろぞろと戻ってくるのを見て行く気が失せたのだ。ミニ鉄道の設備もあり、親子連れが利用しているが、騒々しいばかりで詰まらない。悪趣味なことだ。

 売店は広い割にこれと言って印象的なものはなく、絵葉書のみを買った。17:09の路線バスで帰るつもりで門を出て、グルームブリッジの村へ急ぐ。殆ど時間がなくてぎりぎり。時刻表に「グルームブリッジ、ヴィクトリア」とあるバス停は思った通りパブの名だった。どの方向からバスが来るか不明なので、両方の道を見張らなければ、と思っていた矢先にバスはやってきた。タンブリッジ・ウェルズまで片道1.35£。乗車時間は20分くらいで本当に近い。

 宿に帰り、女主人に、グルームブリッジ・プレイスは意外に良かったが、かなり商業的な感じがしたと話す。持参のリーフレットを見せると、ぎょっとしたような顔をしていた。彼女の話では、以前の持主だった老婦人が亡くなった後、今のような形で庭園として公開されるようになったとのこと。成程。それでこの妙な商業主義的な雰囲気が納得出来たのであった。

 

英国式庭園殺人事件

スチュアート王朝末期のイギリスのマナー・ハウスを舞台に、奇妙な契約のもとに館の絵を描くことになった画家の物語。様々なシンボリズムに彩られた謎に満ちた話。グルームブリッジ・プレイスがそのまま使われているので、訪問の予定がある人は必見。ただし、内容が面白いと感じるか否かは個人の趣味による。私は好きだったけど。大笑いなのはヒュー・フレイザー(「名探偵ポワロ」のヘイスティングス大尉)が17世紀の洒落ものの格好で登場すること。最後のクレジット見るまで全然気づかなかった。

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